弓で射ずに骨で射る

ビジネス書・技術書の読書録。あるいはどこかに辿り着くための思考と妄言を記録する。たまに弓道の話も。

倫理違反はなぜ横行し、放置されるか

f:id:n_231:20150531212040j:plain http://www.loc.gov/pictures/item/hec2009011663/より画像引用

『倫理の過ちを見逃す6つの罠 ~Becoming a First-Class Noticer~*1』 を読んで

大まかな内容

組織において見過ごされた倫理違反は危機をもたらす。

組織が倫理違反に気づく能力を向上させるためにリーダーがすべきことは何か。

・気づきを阻害する6つの要因

  1. 状況の曖昧さ
  2. 見たくない物は見えない
  3. 自分の気づきが自分の利害に反する状況
  4. 緩やかな悪化
  5. 違反者・第3者による隠蔽
  6. 倫理違反が直接的には悪影響を出さない構造

・リーダーがすべきこと

  1. 過去に発生した違反の分析
  2. 外部の意見を取り入れる
  3. 不正に気づき根絶しようと行動を起こす組織作り
考え

 視点が組織を管理監督する立場に固定されているので、可能なアクションが状況は前提にして「気づく」ことにほぼ固定されている。しかし状況を変えるほうが簡単に思えるので、そちらの行動に関しても記述されているとより実りある記事になったと思う。「倫理違反が直接的には悪影響を出さない構造」 などはシステム思考的な問題だと思う。

 本文では例として衣料品工場の火災に対してそこで製造された商品を販売するアパレル企業の経営者の倫理違反をどう評価すべきか、ということが書かれている。

 そこまでいくと、倫理違反というよりもっと一般的な社会問題とその解決の話になりそうだ。(倫理違反は違反者の自覚があるものに限られると思うから。)より一般的とは、問題状況の定義と共有から始める必要もありそうということ。

 「倫理違反者は倫理違反が分かりづらい状況でより倫理違反の行動をする。」という前提を立てると、(例えば、「穏やかな変化」はクレイトン・M・クリステンセン先生の「イノベーション・オブ・ライフ」で触れられているように違反を容易にする。)倫理違反者側の視点に立って気づきの阻害要因を見直すことができて面白い。

 インターネットではなぜ倫理違反的行動が数多く観察されるのか、などを上記要因を見ながら考えるのも面白い。

*1:Diamond Harvard Business Review 2016年6月号 掲載